中央競馬の第132回天皇賞・秋(G1)は30日、東京競馬場の芝2000メートルに18頭が出走して行われ、14番人気のヘヴンリーロマンスがゴール前で、連覇を狙う1番人気ゼンノロブロイをアタマ差で制し、初優勝した。松永幹夫騎手、山本正司調教師とも初優勝。牝馬が天皇賞・秋を制したのは8年ぶり12頭目。3連単の配当122万6130円はG1史上、今年の天皇賞・春に次いで2番目の高配当となった。
同レースは天皇・皇后両陛下が観戦。売り上げは昨年比1.1%増の264億7525万1500円、東京競馬場の入場者は昨年比5.3%増の10万3691人だった。
◆ヘヴンリーロマンス 牝5歳。父サンデーサイレンス、母ファーストアクト。北海道新冠町のノースヒルズマネジメント生産。31戦8勝。重賞3勝目でG1は初勝利。獲得賞金3億9123万9000円。
◇「まさか勝つとは」…山本調教師
内らち沿いに先行するダンスインザムードを、ゼンノロブロイが追い詰める。馬群をこじ開け、一完歩ごとに差を詰め、ついに外から並びかけた。「2連覇成った」。そう思われた瞬間、2頭の間に白帽、赤十字たすきの勝負服が割って入った。伏兵・ヘヴンリーロマンス。ニュッと一伸びした先がゴールだった。
前走、9番人気の低評価を覆して札幌記念を制しはしたが、G1馬8頭が顔をそろえたここでは14番人気の評価も仕方なかった。「掲示板に乗れれば(5位以内)御の字」。松永騎手は山本調教師とそう話していたが、レースが始まると手ごたえがあった。好スタートから折り合うと、スローペースの中団をゆったりと進み、直線へ。先行する2頭の間にできた細道を、抜群の推進力で突き抜けた。
出走31レース目。良血ながら、今ひとつとらえどころのなかった5歳の牝馬の急成長に、山本調教師も「晩成だったのかな。でも超一流馬を相手にまさか勝つとは…」。
ウイニングランで観衆から喝采を受けた松永騎手は、貴賓席前でヘルメットを脱ぎ、馬上から天皇・皇后両陛下に深々と一礼した。牝馬限定レース以外のG1初制覇。と同時に師匠でもある定年間近の山本調教師に、21年ぶりのG1タイトルをプレゼントした。「もう(G1を)勝てずに終わるのかと思ったが、最後の最後にミキオが取ってくれた」と山本調教師。師弟にとって、忘れられないレースとなった。【田内隆弘】