千葉県市川市の姉歯(あねは)建築設計事務所によるマンション耐震データ偽造問題で、国土交通省は、国指定の民間確認検査機関に対する立ち入り検査で、新たに問題となった「構造計算書」などの重要書類を個別に確認する方針を固めた。従来の立ち入り検査は年1回程度で、資格を持っている検査員の数などをチェックするだけだった。
今回偽造を見逃した検査機関「イーホームズ」(東京都新宿区)に対しては昨年、立ち入り検査をしていなかった。建築基準法は年1度の立ち入り検査を定めているわけではないが、「被害」を受けた住民からは国の責任を問う声があがっている。
従来の立ち入り検査は、国家資格の「建築基準適合判定資格者」を持った1級建築士の数▽確認書類の保存状況▽利害関係のある業者を検査していないか--などのチェックが主で、構造計算書を調査したり、再計算することはなかった。
検査の頻度についても、建築基準法は「国は民間検査機関に対し立ち入ることが出来る」とだけ定めており、立ち入り検査が年に1度も行われないこともあった。イーホームズについては昨年、同省の通達で定められている定期報告のみを実施。事務概要や財務状況などの書類が提出されたが、問題は発見されなかった。
このため、同省は建物の耐震性を認定する構造計算書などの重要書類についてのサンプリング調査などを検討している。
同省によると、検査業務への民間業者参入が始まった99年以降、想定以上に業者が増加し、業者間での競争が激しくなったという。このため、立ち入り検査の見直しについて論議を始めていた矢先に今回の問題が発覚したという。
一方、偽造が発覚した完成済みのマンションでは、自治体からの説明会などが連日のように開かれており、ある参加者は「姉歯も、イーホームズも、国も、互いに責任のなすりつけ合いをしているだけだ。全く責任のない我々住民を考えているとは思えない」と批判。別の参加者も「国の責任が最も重い」と憤っている。【長谷川豊】