法律には悪意も善意もない。使い方次第で毒にも薬にもなる。耐震計算の偽造という、想定外の危害に直面された人々には、法律の毒の側面に用心が必要だ。
◇
重畳(ちょうじょう)的などという言葉を日常使うだろうか。ローンもあるし日々の暮らしもある。そこに、購入したマンションは地震に耐えられないという、根底を揺るがす事態が加わる。業者は重畳的に責任を負うという。
◇
問題を生んだ業者が繰り出す法律用語には、用心してもし過ぎることはない。それにしても性善説の時代は去った。疑うことが身を守るとは哀しい。かつての性善説の社会を支えていたのは誰だったのだろう。誰がいなくなったのだろう。
毎日新聞 2005年11月28日 12時33分