クロアチア戦を含めてこれまでの日本代表の戦いぶりとブラジル戦への課題や期待を、日本代表のMFとして活躍した元サッカー女子日本代表監督の宮内聡さんと、大のサッカーファンというキャスターの生島ヒロシさんに聞いた。
◇素早いパス回しで、自分たちのリズムを…
▽元日本代表MFで元サッカー女子日本代表監督、宮内聡さん 日本は、前半から「勝ちたい」という気持ちを強く持って攻め続けていた。ただ、日本代表の良いところがまったく出ていなかった。それはオーストラリア戦も同じだ。これまでの2戦は、攻撃、守備ともに中途半端で、何を意図して戦おうとしているかが見えてこなかった。選手たちも自分たちがどういったサッカーを目指しているか分からなくなっているのではないか。
調子が良い時の日本は、中盤の速いパス回しでボールを動かし、両サイドを走る選手にタイミング良くパスを出すことでチャンスを生み出す。しかし、そうした展開は、クロアチア戦で前半に1回あったぐらいだった。
中田英寿選手、中村俊輔選手という素晴らしいパスを出す選手が日本にはいるが、彼らの高いパス能力を生かすような動きを他の選手ができていない。また、先月のドイツ戦で見せたようなFWの連係プレーも見られなかった。
次のブラジル戦は攻撃でも、守備でも、一つのことを徹底してやるべきだと思う。これまでの2戦は、ボールを奪われ、攻め込まれた時のリスクを考えすぎたために、思い切りの良い攻撃ができていなかったように感じた。素早いパス回しで、自分たちのリズムを作り出すことが重要だ。自分たちのリズムが作れれば、決して勝機がないわけではない。
◇悔いのない戦いを
▽サッカー番組で司会を務めたキャスターの生島ヒロシさん 日本代表は、98年フランス大会に比べ、パス回しが速く、ゲームに対する想像力も豊かになるなど、選手のレベルは上がっている。ジーコ監督の指導で自由度も増した。しかし、今回のクロアチア戦では、「サッカーは、ゴールを決めなければならないスポーツ」ということを改めて感じた。
FW陣は元メキシコ五輪銅メダルの釜本邦茂さんのように「何が何でも、おれが決める」という執念を持たなければならない。それだけに、得点できなかったのは残念だった。相手が好機で何度も外していただけに、日本が勝てる流れでもあった。また、世界の強いチームはファウルぎりぎりのずるがしこいプレーもする。日本はまだまだお人よしで、対抗すべく、ずるさも必要だろう。
ブラジル戦については、日本は96年アトランタ五輪で1対0でブラジルを破った「マイアミの奇跡」を起こしたこともあるし、希望は捨てていない。ジーコ監督が言うように、選手たちは顔を上げて試合に臨んでほしい。失うものは何もないのだから、悔いのない戦いをしてもらいたい。
毎日新聞 2006年6月19日 10時33分