「世界少年野球」の開会式で選手宣誓をする長谷部理矩君=札幌市の麻生球場で29日午前11時12分、近藤卓資写す
第17回世界少年野球大会北海道大会(実行委主催、毎日新聞社など後援)が29日開幕し、札幌市市北区の麻生球場で開会式が行われた。大会提唱者で、腫瘍で胃を全摘出し入院中の王貞治・福岡ソフトバンク監督のメッセージが紹介されると、会場から拍手が起きた。
メッセージは「参加できず申し訳ありません。野球の基本を身につけ、多くのお友だちと仲良しになってください」との内容。開会式で長谷部理矩さん(11)らが「正しい野球を学び、世界各国に友だちを作ることを誓います」と宣誓した。
大会は王監督らが野球を通じ子供たちの友情を深めようと90年に始めた。今回は初参加のウガンダなど海外の85人と国内の85人の計170人の子供たちが参加。8月3日まで、札幌、恵庭、江別、北広島の各市で少年野球チームとの親善試合や野球教室、地元の子供たちとの交流行事がある。【岸本悠】
◇コーチ参加のホンダ熊本元監督、特別な思い
29日開幕した世界少年野球北海道大会に、国際野球連盟(IBAF)のコーチとして参加する社会人野球・ホンダ熊本元監督、内川義久さん(51)には特別な思いがある。大会開催に尽力した王貞治さんが闘病中なのに加え、大会にかかわってきた元巨人監督、藤田元司さんも今年2月に亡くなったからだ。内川さんは「子供たちに野球の素晴らしさを教える2人の思いをしっかり受け止めて務めたい」と誓った。
内川さんは大分・鶴崎工高から法大を経てホンダ鈴鹿に入社。83年、発足したばかりのホンダ熊本に移籍し、コーチやマネジャーを務めた。97年から日本野球連盟の競技力向上委員になり、同連盟の推薦で97年の長崎大会から3年間、IBAFコーチとして、子供たちに野球を教えた。今夏は4回目の参加となる。
97年の大会では、遠征直後に駆けつけた王さんに「しっかり子供たちに野球を教えてください」と声をかけられた。藤田さんからもたびたび激励され、「子供を育てる大切さを教えていただいた」と感銘を受けた。
01年にホンダ熊本監督を辞めた後は一時野球から離れた。だが、藤田さんの死をきっかけに「藤田さんの思いを受け継ぐために何ができるのか」と自問し、7年ぶりにコーチ役を買って出た。
開催直前、王さんも手術のため参加できなくなった。内川さんは「お二人は、野球を普及させることに全力を注いでいた。野球が発展していない国の子供たちが、うまくなった時の笑顔を見たい」と意欲を燃やしている。【百留康隆】