パロマ工業(名古屋市)製のガス瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故で、事故機種が発売当初から故障が相次ぎ翌年に設計変更を行ったにもかかわらず、その後も故障が続発していたことが分かった。故障率は約3%(100台中3台が故障)に上っていたが、同社の役員会には一度も報告されず、パロマ幹部が事故につながる重要な事実を把握しなかったことが、事故対応への遅れにつながったとみられる。
事故機種は1980年の発売当初から、制御装置に「はんだ割れ」が起き、種火がつかなくなるトラブルが相次いだ。同社は81年、この欠陥を改善するため、はんだの量を増やすなどの設計変更を行った。
しかし、事故機種の不具合はなくならず、1993~97年の5年間で計6500件に上った。故障原因の約7割が制御装置のはんだ割れで、故障率は約3%と、同社の他製品の数十倍から数百倍に達していた。同社関係者は「故障率は通常0.1~0.01%くらいで、1%を超えることはまずありえない」と語っている。
一連の事故のうち、14件の原因となった不正改造は、制御装置の故障の応急修理が目的だった可能性が高い。この不正改造による中毒事故は85年に初めて発生。同社は88年までに、不正改造が故障の修理に伴うものである可能性を把握し、全国の営業所に「修理時は、必ず安全(制御)装置を修復すること」と指導していた。
同社品質管理部は、88年以降も故障の多発を把握していたが、不具合情報を役員会に報告することはなく、事故機種についても「故障率は高いが、部内で対応できる」として一度も報告しなかった。
一方、不正改造による死亡事故はすべて役員会に報告されており、同社は「事故原因は製品の欠陥ではない」と結論付けていた。
このため、故障の多発と不正改造による事故の多発との関連についての議論はされないままで、不正改造事故を防止するための製品の回収や一般消費者への周知といった対策はとられなかった。【中井正裕】
毎日新聞 2006年7月31日