パロマ工業(名古屋市)製の瞬間湯沸かし器で05年11月、東京都港区南麻布の大学生、上嶋浩幸さん(当時18歳)が一酸化炭素(C0)中毒死した事故で、警視庁捜査1課は、同社と親会社パロマで製造・品質管理を担当する幹部社員らから任意の事情聴取を始めた。安全装置が働かなくなる不正改造が修理業者によって施されていたことや、事故機種での故障の多発をパロマ側が把握していたことに注目。関係者からの聴取や現場検証をふまえ、業務上過失致死容疑での立件の可否を検討する。
上嶋さん死亡事故では、直後の検証で室内のCO濃度が通常の400倍だったことが判明。同課は死因を湯沸かし器の不完全燃焼によるCO中毒とみていたが、排気ファンのコンセントが抜かれてファンが回らない状態になっていたため、機器の構造は問題視されず、メーカーや修理業者の過失は疑われなかった。
しかし今月14日に経済産業省とパロマが一連の事故を公表。その後、パロマ側が修理業者による不正改造を把握していたことや、事故機種の安全装置で「はんだ割れ」と呼ばれる故障が多発していたことが判明した。札幌市の事故を巡る損害賠償訴訟で、元協力業者が、改造を誘発する背景として安全装置の在庫不足を指摘していたことも分かった。上嶋さん死亡事故の再捜査でも事故器の改造が確認された。一連の事故は全国で27件に達し、死者は21人に上る。
こうした状況を踏まえて同課は、上嶋さん死亡事故について、改造した人物の特定とともに、メーカー側の対応についての検討も必要と判断。故障の多発や改造の危険性、安全装置の在庫不足をどのように認識していたかを幹部社員から聴いている。
毎日新聞 2006年7月25日