日本製紙グループ本社が3日、北越製紙の株式取得を表明したことで、王子製紙が北越の経営権獲得を目指す敵対的TOB(株式の公開買い付け)は、製紙業界1位(王子)、2位(日本)が直接対決する「北越争奪戦」へ発展した。TOBの成否と、北越や三菱商事などの動き次第で製紙業界の勢力図が大きく塗り替わる可能性もあり、業界再編の行方は混迷の度合いを一段と強めている。
◇迫られる製紙業界の再編
製紙業界は90年代以降、過当競争に打ち勝つため大手企業同士の合併、統合が進んだ。王子は93年に神崎製紙と合併、さらに96年に本州製紙と合併し現在の「王子製紙」になった。日本製紙は十条製紙と山陽国策パルプの合併で93年に発足したが、01年に大昭和製紙との経営統合によって現在の「日本製紙グループ本社」となり、業界の2強体制が確立した。
日本製紙連合会によると、01年以降、国内の紙・板紙市場で段ボールなど板紙生産量は王子製紙がトップに立っている。一方、ティッシュや印刷用紙などの紙生産量は、日本製紙が王子製紙を上回っており、両社が激しくしのぎを削る構図だった。
だが、パソコンの普及などを背景にした情報技術社会の進展で、国内の紙需要は頭打ちになっている。さらに、海外からは安い輸入紙が流入しており、製造コストの増加を製品の価格に転嫁することも困難な状況で、業界を取り巻く経営環境は厳しい。
王子製紙が「世界で生き残る道は業界再編しかない」(役員)として、北越製紙に対する敵対的TOBを実施したことや、日本製紙がTOBの阻止に踏み切ったことは、国内上位の大手企業でさえ、製紙業界の将来に強い危機感を持っていることを如実に示している。今回のTOB成立の成否にかかわらず、製紙業界が再編を迫られていることは間違いなさそうだ。【森山知実】
毎日新聞 2006年8月3日