王子製紙から敵対的TOB(株式の公開買い付け)を仕掛けられた北越製紙は7日、三菱商事を引受先とする総額約303億円の第三者割当増資を実施した。この増資で三菱商事は北越の発行済み株式の24.4%を保有する筆頭株主になった。三菱商事は王子のTOBには応じない方針で、北越株の過半数取得を目指す王子のTOBの行方が注目される。今後は、北越株の10%未満取得を表明した日本製紙グループ本社と北越が提携するかが焦点になる。
三菱商事への第三者割当増資は1株当たり607円で実施した。一方、王子のTOBは、増資による株式数増加で株価が下がることを織り込み、買い取り価格は800円(増資撤回の場合は860円)で実施している。北越株の評価に約200円の差があるため、三菱商事は自社の株主にTOBを拒否する理由の説明が求められそうだ。
三菱商事は、グループ企業で業界中堅の三菱製紙が将来的に北越と連携することを視野に増資に応じたと見られる。しかし、王子と日本製紙による北越株争奪戦で状況が変わった。三菱商事は、日本製紙から「緩やかな協力関係を築くための協議に入りたい」と提案されたが「コメントする立場にない」と静観している。一方、三菱商事は王子ともカナダで合弁事業を行うなど関係は深く、王子と日本製紙との板ばさみ状態に陥った。
三菱商事は、北越株の争奪戦の行方を左右する鍵を握っており、その対応によって製紙業界の勢力図にも大きな影響を与える。【小原綾子】
毎日新聞 2006年8月7日