名古屋市発注の地下鉄工事を巡る談合事件で、仕切り役の大林組名古屋支店元顧問、柴田政宏被告(70)=競売入札妨害罪で公判中=とともに受注調整していたのは、各ゼネコンの部長級幹部に限られていたことが分かった。調整内容が漏れないようにしていたとみられる。公正取引委員会は部長級幹部が主導した悪質な談合事件と判断し、一両日中にも独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで検察当局に刑事告発する模様だ。
大手ゼネコンは過去に独禁法に基づく行政処分を受けたことがあるが、同法違反で刑事訴追されれば初めてのことになる。告発を受ける名古屋地検特捜部は、これら部長級幹部らを逮捕する方針を既に固めている。大手4社が談合決別を申し合わせた05年末以降の入札が容疑となるため、経営陣の監督責任も問われそうだ。
関係者によると、会合は05年12月中旬、名古屋市の大林組名古屋支店内で開かれ、柴田被告が市営地下鉄6号線の延伸工事5件(昨年2月~6月入札)を、▽鹿島▽ハザマ▽前田建設工業▽清水建設▽奥村組を筆頭会社とする五つの共同企業体(JV)に割り振った。
この会合に出席したのは、大半が各社の部長級幹部で、あるゼネコン首脳は「特別の事情がない限り、柴田被告が部長クラスしか相手にしないことになっていた」と説明する。受注予定社(チャンピオン)の決定権は柴田被告が握っており、各社部長級幹部以外は、詳しい経緯を知り得ない形になっていた。
実際の入札では、一部で落札工区が入れ替わったものの、五つのJVが総額約192億円の工事を独占した。
独禁法違反の立証には、相互に競争を拘束し合う合意(基本合意)の存在が必要とされる。公取委は会合を謀議ととらえ、各社が受注競争を放棄する基本合意に達したと判断したとみられる。【斎藤良太、小林直】
毎日新聞 2007年2月27日 3時00分