プロ野球・西武ライオンズからアマ２選手への金銭供与問題で、早稲田大学野球部の清水勝仁選手（２１）＝３年＝は１５日、早大の会見に姿を現し、金銭授受を認めて謝罪。プロ球団からの金品授受を禁じた日本学生野球憲章に違反したとして会見直後に退部処分が決まった。中学時代からプロの目に留まった野球少年は、囲い込まれた球団の都合に振り回され、ルール違反にも手を染めた。あこがれだったワセダのユニホームを着ることはなくなり、プロ入りの夢は遠ざかった。【大矢伸一】

　清水選手は会見で「ルールに反したことをやってしまった。報道があった時すぐに本当のことが言えず、深く反省しています」と頭を下げた。

　９日夜、練習を終えて自宅に戻った清水選手は電話の着信を見て、西武の前田俊郎スカウトに電話した。「テレビを見ろ」と告げられ、発表を知った。「ばれてしまった。何があっても知らなかったことにしてくれ」

　「西武が自分を守ってくれるということなので、従うしかないと思った」。早大野球部の聴取に当初「知らない」と答えていたが、「自分を助けてくれようとしている人を裏切ってうそをつくことに耐え切れなかった」。１２日夜になって正直に話すことを決めた。言葉に詰まりながら、苦しそうな表情で話した。

　清水選手は昨年退団した別の西武スカウトと兵庫県のボーイズリーグ（少年の硬式野球）時代から面識があり、家族ぐるみで食事することもあった。岩手・専大北上高に進学したのも、このスカウトの紹介。高３の夏には埼玉県所沢市にある西武の練習場で実技テストを受け、その日のうちにドラフト指名することを告げられた。その後、早大進学に変えたのも、スカウトと高校の高橋利男コーチ（当時）からの指示だった。

　清水選手は高校時代に現金供与に応じる合意書にサインしていたが、「後で契約金から返すということで、あまり深くは考えなかった」。早大入学後の０４年８月、明大の一場靖弘投手（現楽天）が巨人から現金供与を受けていた問題が発覚。「ばれた時、大学に迷惑をかけると思ったが、学費がかかっているので、親に迷惑をかけたくない気持ちが勝った」と葛藤（かっとう）を語った。

　甲子園出場はないが、早大にはスポーツ推薦で合格。東京六大学リーグでは２年の０５年春に内野手として１２試合に出場し、就任１年目だった応武篤良監督に率いられたチームの優勝に貢献した。

　清水選手に退部処分を告げた応武監督は「野球を取り除いても長い人生がある。背を向けず、お互い協力し合って頑張ろう」と励ましたという。

　清水選手は「仲間に申し訳ない。背を向けず、しっかり謝りたい」と最後に話した。