厚生労働省が4日まとめた毎月勤労統計調査(速報値)によると、2014年の1人あたりの現金給与総額は、月額31万6694円と前年比0.8%増えた。賃金が増加に転じたのは4年ぶりで、伸び率は17年ぶりの大きさ。業績改善や人手不足を受けて賃上げの動きが広がった。ただ物価上昇と比べると賃金の伸びは緩やかで、消費を押し上げる力は弱い。
5人以上の事業所を調べた。内訳を見ると、特別給与が5万5647円と3.5%増えた。業績が良い企業が賞与を積み増して従業員に還元した。残業代にあたる所定外給与も1万9690円と3.1%増えた。製造業などで残業時間が増えたためだ。
基本給など所定内給与は24万1357円と増減ゼロだった。14年の春季労使交渉で、賃金水準を底上げするベースアップ(ベア)が広がり、9年ぶりにマイナスを抜けだした。賃金が低いパート労働者の比率が29.8%と0.4ポイント上がって過去最高を更新したことが下押し圧力となり、プラス圏には届かなかった。
現金給与総額を業種別にみると、郵便局など複合サービス業が4%増えた。日本郵政のベアなどが要因とみられる。電気・ガス業(3.2%増)、不動産・物品賃貸業(2.9%増)のほか、製造業(2.5%増)など幅広い業種で伸びた。
働き方別にみると、正社員を中心とするフルタイムの労働者は40万9860円と1.3%増えた。プラスは2年連続だ。パートタイム労働者は0.4%増の9万6979円と2年ぶりに増加に転じた。
1カ月以上働く常用労働者は4681万人と1.5%増えた。11年連続で増えて、最高を更新した。フルタイム労働者は1.0%増えた。プラスは3年ぶりだ。人手不足もあって正社員の採用で人材を囲い込む会社が増えつつある。パートタイム労働者は子育てが一段落した女性の進出で2.7%増えた。
賃金が増えているのは、円安による企業業績の回復が大きい。13年の政労使会議で賃上げの必要性で合意したことも後押しとなり、賃金水準を底上げするベアや一時金の積み増しで社員に還元する動きが企業に広がった。
ただ物価の伸び率を考慮した実質賃金は2.5%減った。名目の賃金は0.8%増えたものの、消費者物価(持ち家の帰属家賃除く総合)が3.3%上がったためだ。減少率はリーマン・ショック後の09年(2.6%減)に次いで過去2番目の大きさだ。
4月に消費税率を5%から8%に引き上げたことに加えて、金融緩和で円安が進み、輸入品の価格が上がった。消費税率を3%から5%に上げた1997年の実質賃金は増減ゼロの横ばいで、今回の方が影響が大きいことがわかる。