皮肉はイスラエルのネタニヤフ首相の強みではない。首相は今週ワシントンでイランの核開発計画についてまたもや終末論的な警告を発した。彼は、自らが2012年に国連で高く振りかざしたイラン製爆弾の大まかな図は国に置いてきた。最近の舞台(米議会での演説)は、現在ほどイスラエルの武装解除に熱心な指導者(米大統領)はかつていなかったことをあらためて思い起こさせた。
米議会で演説するイスラエルのネタニヤフ首相。後列左はベイナー下院議長(3日、ワシントン)=AP
驚くまでもなく、ネタニヤフ首相は米議会で共和党の友人らから温かい拍手を勝ち取った。ベイナー下院議長はオバマ大統領を困惑させる機会を決して逃さなかった。多くの民主党議員は議会を欠席した。イスラエル国民が懸念すべきは米議会の外では誰も耳を傾けていないということだ。ネタニヤフ首相は、特有の好戦的な強硬姿勢でかなり前に欧州の支持を失った。共和党と手を組んでオバマ大統領を中傷することで、首相はホワイトハウスとの信頼関係を打ち砕いた。
■信用をなくしたネタニヤフ首相
ここに一つの皮肉がある。ネタニヤフ氏は自らの信用をなくしたのだ。彼が率いるイスラエル政府は、イランとの核を巡る取引の明白なリスクについて何を言おうと――常識的なことであろうとなかろうと――中東で新たな戦争を常に始めようとする人物の妄言にすぎないと割り引いて受け取られるだろう。大物政治家であれば、イスラエルをイランの核開発を巡る6カ国協議のパートナーにしただろう。脇から怒鳴っていたネタニヤフ氏は一人脇に取り残された。
イスラエルが孤立に向かうのはイランについてだけではない。国連によるパレスチナ国家の正式承認に向けて国際社会を動かした世論の高まりは、イスラエルがヨルダン川西岸の違法な入植地を急拡大したことに直接遡れる。
うぬぼれが強いとしか言いようがないが、ネタニヤフ氏は今回の訪米を「宿命的で歴史的でさえある任務」と呼んだ。彼は現代のウィンストン・チャーチルを自称するものの、多くのイスラエル人の見方は異なる。野党政治家らは、ヘルツォグ労働党党首に負ける可能性のある総選挙を2週間後に控え、ネタニヤフ氏がメディアの注目を引こうとして米国との関係を損なったと批判する。
さらに、同国の安全保障に関わる元高官や元軍幹部の多くが、ネタニヤフ氏のスタンドプレーは「イスラエルの安全保障に対する明白で今そこにある危機」であると指摘する。オバマ大統領との不和は米議会でのイスラエルに対する超党派の支持を脅かすもので、最も大切な友人を敵に回したとしている。