【ジュネーブ=原克彦】欧州合同原子核研究機関(CERN)は12日、ヒッグス粒子の発見に貢献した大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を3月下旬に再稼働すると発表した。補修のために2年ほど運休していたが、再稼働に備えエネルギー量を2倍近くに増やした。より多くのデータを集められるようにし、宇宙を満たす謎の「暗黒物質」の存在確認にも挑む。
CERNによると再稼働時のエネルギーは13兆電子ボルトと、従来の7兆~8兆電子ボルトより大幅に引き上げる。宇宙の始まり「ビッグバン」により近いエネルギー状態を実現し、陽子同士がぶつかって飛び散る粒子に、これまで観測していない別のヒッグス粒子があるかなどを確認する。
陽子の分離に要する時間も25ナノ(ナノは10億分の1)秒と従来より半減した。実験でより多くの粒子の痕跡を観測することができるようになる。この過程で未知の物質を観測する可能性もある。ロルフ・ホイヤー所長は記者会見で暗黒物質について「自然が我々の味方なら、そのようなすごい粒子を見つけられるかもしれない」と語った。
CERNは2013年に万物の質量(重さ)の起源とされるヒッグス粒子の存在が確実だと断定。粒子の存在を予言したピーター・ヒッグス氏は同年のノーベル物理学賞を受賞した。