政府は13日午後、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う福島県内の除染で出た汚染土を中間貯蔵施設の用地内に搬入を始める。事故から5年目に入ったが、当面の1年間で県内43市町村から運び入れる量は全体の1%を下回る。施設全体の用地交渉は難航し、30年以内に福島県外で最終処分する工程も見通しが立たない。今後は様々な課題が待ち受ける。
望月義夫環境相は同日の閣議後会見で「施設への搬入開始は福島の除染や復興の推進にとり大切な重要な一歩。30年後に(最終処分を)しっかりとできるように道筋を立てていきたい」と述べた。
政府は1兆1000億円の国費を投じて福島県の大熊、双葉両町にまたがる16平方キロの用地に施設を建設する。最大で東京ドーム18杯分に相当する約2200万立方メートルの汚染土を搬入し、13日から最長で30年保管したのち、県外で最終処分する。
政府は13日午前、大熊町の仮置き場で、汚染土の搬出に向けた準備作業に着手した。午後には中間貯蔵施設の建設用地内に企業から無償で借りた土地に整備した保管場に初めて搬入する予定。
双葉町でも13日から仮置き場から保管場への搬入を始める予定だったが、町内の調整に時間がかかり、25日に延期した。
1000カ所以上ある仮置き場からの搬出は、大熊、双葉両町を皮切りに福島第1原発周辺にある双葉郡と田村市を加えた9市町村で始め、県内の43市町村へと広げる。ただ今後1年間は試験搬入と位置づけ、施設の用地内に運ぶ量は計4万3000立方メートルにとどまる。
政府は2014年9月以降、2000人を超える地権者との用地交渉を進めているが、売買契約に至ったのはわずか。施設の完成時期は不透明だ。30年以内の県外での最終処分についても法制化したが、最終処分場の選定など具体的な工程表の議論も始まっていない。
中間貯蔵施設は当初、14年7月に着工して今年1月から汚染土を搬入する予定だった。建設の受け入れを巡る地元との交渉が滞り、計画を先送りしていた。