訪日外国人の増加に伴い、成田空港第2ターミナルの入国審査場の混雑が増している。東日本大震災以後、2カ所ある審査場を1カ所で運用する状態が続いていることが要因だが、運用を戻すための省庁間の調整は進まない。空港関係者からは「外国人観光客を日本の玄関で待たせることになり印象が良くない」と、早急な改善を求める声が出ている。
国際線の到着便がラッシュとなる午後4時半すぎ。入国審査場にはあっという間に外国人約300人の列ができた。韓国から来た女性は「韓国の空港はもっと列が短い。疲れた」と語り、うんざりした表情を浮かべた。
審査場のある一帯は「税関・入国管理・検疫(CIQ)」と呼ばれ、運用は3者による協議で決める。震災後の訪日旅客の大幅減を受け、CIQは同ターミナルで2カ所ある審査場の運用を1カ所に絞った。
政府は2012年に閣議決定した「観光立国推進基本計画」で、訪日旅客の受け入れ促進に向け入国審査の待ち時間を20分以下とする目標を掲げた。しかし国の調査では、同ターミナルの13年の最長待ち時間平均は26分に上り、12年平均の27分よりやや改善したものの目標に届かない状態が続いている。
震災後、外国の格安航空会社による同ターミナルへの就航が相次ぎ、訪日外国人も増加。航空会社側は「旅客の利便性向上のためにも2カ所での運用が必要」と要望するが、CIQによる具体的な動きは見られない。
CIQ関係者は「1つの機関の考えだけでは決められない」と語り、財務、法務、厚生労働、農林水産の各省に所管がまたがる縦割りの影響をほのめかす。
各省庁の施策をチェックする総務省の行政評価も混雑改善を法務省に勧告。早稲田大の戸崎肇教授(交通政策)は「政府が年間訪日外国人2千万人を目指す中、CIQにも相応の対策が求められる。早急に対策を取らないと観光を起爆剤とする経済成長に支障を来す可能性がある」と話す。〔共同〕