東京と金沢を最速2時間28分で結ぶ北陸新幹線が14日午前、開業した。既に運行中の東京―長野間を延伸し、新潟、富山両県を経て石川県につながる。東京と富山の所要時間は1時間強、金沢は約1時間20分短縮され、首都圏と北陸の移動が円滑になる。観光、ビジネス両面の効果に期待する地元は歓迎一色。一番列車の乗車券を手に入れた乗客たちは、快適な旅を楽しんだ。
始発列車「かがやき500号」は午前6時1分に金沢駅を出発し、満席の状態で同8時半すぎに東京駅に到着した。
北陸新幹線の富山駅で乗車し、家族4人で観光に来た富山市の会社員、山口広志さん(43)は「車窓から見える立山連峰の朝焼けがとてもきれいだった。富山から東京まで2時間になり本当にうれしい」と話した。
金沢駅では記念式典が開かれ、太田昭宏国土交通相が「沿線で企業立地が拡大するなど、大きな効果がある」と話した。石川県の谷本正憲知事は「地方創生が課題となる中、石川は大きな優位性を得る。効果を県内すみずみまで波及させたい」と述べた。
金沢駅を出発する北陸新幹線の一番列車「かがやき500号」(14日午前、金沢市)
改札前に設置された舞台では、金沢市内の茶屋街の芸妓(げいぎ)があでやかな着物に身を包み、舞踊「金沢風雅」で乗客を出迎えた。コンコース内に格調高い歌と三味線の音色が響き渡り、芸妓5人が音に合わせて優雅に踊ると、見物客は「きれいね」と見入っていた。駅前では消防団員が江戸時代の火消し「加賀とび」の技を披露し、乗客の来訪を歓迎した。
地元経済界も歓迎する。黒部宇奈月温泉駅(富山県)では吉田忠裕YKK会長が「創業者(父親の忠雄氏)は最初に新幹線誘致の陳情に行った一人。涙が出るくらいうれしい」と感慨深げに話した。
北陸新幹線の運行は東京―上越妙高(新潟県)間を東日本旅客鉄道(JR東日本)、上越妙高―金沢間を西日本旅客鉄道(JR西日本)が担当する。
JR東の冨田哲郎社長は東京駅での出発式で「新幹線開業が地方経済の活性化という課題を解決する大きな原動力になることを期待する」とあいさつ、JR西の真鍋精志社長は金沢駅で「北陸と広域の交流がより広がってほしい」と話した。
今回、延伸された長野―金沢間の距離は228キロ。長野から先に飯山(長野県)、新高岡(富山県)など金沢を含む7つの駅を設けた。東京と金沢を結ぶ定期列車は、停車駅を大宮、長野、富山などに限定した速達型の「かがやき」が10往復走る。長野―金沢間のほぼ全駅に止まる「はくたか」も14往復設けた。
北陸新幹線を巡っては政府が1月、当初計画より3年前倒しして2022年度に福井県の敦賀まで延伸することを決定。与党内では20年の東京五輪の前に敦賀より東側の福井駅まで先行開業させる検討が始まった。大阪までの開業時期やルートは決まっていない。