【テルアビブ=押野真也】17日投票のイスラエルの総選挙は開票がほぼ終わり、ネタニヤフ首相が率いる与党の右派リクードが勝利を確実にした。定数120議席の議会で、他の右派政党や宗教政党を連立に加えることができれば過半数議席を確保できる見通しで、ネタニヤフ政権が継続する公算が大きい。同氏は「再選されればパレスチナ国家樹立を認めない」と明言しており、中東和平問題ではイスラエルの強硬な姿勢が続きそうだ。
18日未明(日本時間同日午前)に商都テルアビブで支持者の前に現れたネタニヤフ首相は「(世論調査の)予想に反して、リクードは偉大な勝利を手にした」と発言した。演説中、左隣に立つサラ夫人と数回キスを交わし余裕を見せつけた。
イスラエルのメディアによると、ほぼすべての票が集計された段階でリクードの獲得議席が29、中道左派のシオニスト連合が24などとなっている。
世論調査では劣勢が伝えられ、危機感を募らせたリクードが党員や支持者に携帯電話のメッセージ機能を使って投票を呼びかけた。リクードの強固な支持基盤が機能し、盛り返した。ネタニヤフ氏はパレスチナ問題やイランへの対応で強硬な姿勢を前面に打ち出すことで右派の取り込みに成功したようだ。
選挙後の演説でネタニヤフ首相が真っ先に強調したのは安全保障だ。経済や社会福祉に言及する前に「真の安全を確保することが重要だ」と述べた。イランの核開発やパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスを念頭に、強硬姿勢を継続することが重要だとの立場を強調した。
ネタニヤフ氏は演説で「(安保など)現実の危機は待ってくれない」と述べ、迅速に連立政権を樹立する意向を示した。ただ、右派政党の中にはネタニヤフ氏への反発もくすぶっている。連立協議が順調に進むかどうかは不透明な面も残る。
ネタニヤフ政権が継続した場合の当面の焦点は米国との関係だ。オバマ米大統領とネタニヤフ氏はイスラエルのパレスチナ自治区への入植活動やイランの核開発などを巡って度々対立し、公然と批判し合う「異例の同盟関係」(現地紙)となってしまった。
今後の連立協議によっては極右政党の発言力が強まる可能性もあり、米国との関係が一段と悪化することを懸念する声もある。
政変や過激派「イスラム国」の台頭で中東の政治状況が揺らぐなか、米・イスラエル関係がこれ以上こじれると、地域の安定をさらに損ないかねない。