【ソウル=加藤宏一】韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は21日、ソウルを訪問中の中国の王毅外相と会談した。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)参加について韓国側は「総合的に検討中だ」との立場を伝えた。より前向きな回答を期待していた中国に対し、抑えた表現で応じた形だ。
会談を前に握手する中国の王毅外相(左)と韓国の尹炳世外相(21日、ソウル)=共同
会談は予定より長い1時間50分にわたり、2月に仮署名した中韓自由貿易協定(FTA)を土台にした経済協力の拡大などでも合意した。
王氏は尹氏との会談終了後、記者団に対し、AIIBについての韓国の立場を「一歩進んだ研究をしているとのことだった」と説明した。
これに対し、韓国政府当局者は、中国側がAIIB参加を要請してきたことを明らかにしたうえで「韓国は総合的に様々な側面から勘案して検討中だ」と述べるにとどめ、王氏の発言を否定した。AIIBに距離を置く米国と中国とのバランスに腐心する韓国の姿勢がにじんだ。
日本はAIIBについて、麻生太郎副総理・財務相が条件付きの協議の可能性を示唆したが、「公正なガバナンスを確立できるか」(安倍晋三首相)として、参加には慎重な姿勢のままだ。戦後の国際金融秩序への挑戦だとして不快感を示す米国と連携して、アジア地域で中国の発言力が高まるのを阻止したいのが日本の基本戦略だ。
韓国は公式には明確な立場を示しておらず、崔炅煥(チェ・ギョンファン)経済副首相兼企画財政相が「3月末までに政府の方針を決める」と述べるにとどまっていた。韓国にとって中国は最大の貿易相手国で貿易額はすでに米国の2倍にあたる。一方で同盟国の米国への配慮もあり、韓国政府は今後もAIIB参加の議論を慎重に進める構えだ。
同日開かれた日中韓外相会談では、3カ国の自由貿易協定(FTA)交渉の推進などで一致。日中韓FTAは自由化の目標設定で合意に至っておらず、2015年中の大筋合意には暗雲が漂っている。このほか、3カ国は環境や原子力安全などでも協力を進める方針だ。