和歌山県新宮市出身の作家、佐藤春夫(1892~1964年)の旧制新宮中学(現在の新宮高校)に入学した1904年の日記や、中学時代の写真などが新たに見つかり、市立佐藤春夫記念館が7日、発表した。
自身の少年時代をモチーフにした小説「わんぱく時代」(57年発表)執筆のために使われた新宮市内の資料写真も見つかり、写真は春夫の孫・高橋百百子さん(東京都)が3月、記念館に寄贈。日記を写した写真データも記念館に贈られた。
日記は春夫が父・豊太郎に強要されて書いたとみられ、記念館の辻本雄一館長は「豊太郎の教育パパぶりが分かる。春夫は中学入学当時、文学的目覚めはなかったと推測される。第3学年で留年するあたりを契機に思想的にも飛躍したのではないか」と話している。
記念館によると、春夫の息子・故佐藤方哉さんの自宅を整理する中で見つかった。日記は「一寸光陰不可軽」と題され、04年(明治37年)1月1日から7月29日までの計54ページ。起床や就寝時間を記しているほか、当時の雑誌『少年世界』を読んだり、テニスや「ベースボール」をしたりするなど、ごく普通の子どもの生活風景が書かれている。
春夫の写真は08~09年に新宮市の神倉神社石段で中学留年中に撮影されたとみられる。資料写真は22枚あり、いずれの写真も昭和30年代の市内の風景だった。写真は近く一般公開される。〔共同〕