8日の東京株式市場では日経平均株価が続伸し今年に入ってからの高値を更新した。2000年4月以来、約15年ぶりの高値水準となり、2万円の大台に迫っている。市場では企業収益の拡大への期待が高まっており、15年度に日本の上場企業は1~2割の増益になると予想する。企業収益の減速が予想される米国と比べ日本株に資金が向かいやすくなっている。
8日の日経平均の終値は前日比149円(0.76%)高の1万9789円だった。上昇の背景にあるのは好調な企業業績だ。証券各社は現時点で15年度は2ケタの経常増益になると予想する。
野村証券は主要250社ベースで前年度比16%の増益、ゴールドマン・サックス証券は東証1部ベースで2割近い経常増益を見込んでいる。大和証券が東証1部上場企業の証券アナリストの業績予想を集計したところ、純利益でも15%近い増益が見込まれていた。
けん引役は自動車や電子部品などの輸出企業だ。円安による輸出採算の改善に加え、米国をはじめとした世界景気の緩やかな回復で販売数量が伸びる。トヨタ自動車の16年3月期のアナリスト予想は前期の会社計画に比べて税引き前利益が15%増と、過去最高益の更新が期待されている。
苦戦していた企業の業績も回復を見込む。ソニーは不採算事業のリストラが一巡し、大幅な増益を予想する声が多い。小売りなど内需企業も「価格転嫁の浸透で好業績が期待できる」(野村証券の伊藤高志エクイティ・マーケット・ストラテジスト)という。
企業収益が伸び悩むのが米国だ。米調査会社トムソン・ロイターによるとS&P500種採用企業の1株利益は、15年度に1.7%の伸びにとどまる。石油関連企業の悪化に加え、ドル高が逆風だ。これから本格化する1~3月期決算を前に市場予想は急速に減額修正されており、投資家の警戒感が高まっている。
欧州株は欧州中央銀行(ECB)による量的緩和をきっかけに株価の水準を示す予想PER(株価収益率)が切り上がり割安感が乏しくなった。米国株のPERも高止まりしている。これが「日本株は好業績が見込める上に株価の割高感もない」(米プリンシパル・グローバル・インベスターズのジム・マコーガン最高経営責任者)との評価になり、海外から資金を呼び込んでいる。
4月下旬から15年3月期の決算発表が本格化する。会社の期初計画は保守的になりやすく、市場の期待に届かない可能性がある。大和証券の鈴木政博シニアクオンツアナリストは「決算が始まると失望売りも出てきそうだ」と指摘していた。