アフガニスタンで初めて国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録された中西部ゴール州のジャム遺跡の中心をなす高さ約65メートルのミナレット(尖塔=せんとう)が、地盤浸食によって約8年間で3センチほど傾いていたことが同国政府とユネスコの調査で13日までに、分かった。壁面の装飾の劣化も進んでおり、さらに傾斜すれば倒壊の懸念も強まる。
ジャム遺跡は2002年に世界遺産に登録。06年に測量した際には02年の測量時と比べて傾斜の変化はほとんどなかったが、14年11月に再調査した結果、高さ58メートルの地点で東側に2.8センチ傾いていたことが確認された。風雨や雪の影響で側面を覆う装飾タイルも多数はがれ落ち、遺跡の盗掘被害も後を絶たない。
同遺跡は12世紀ごろに栄えたゴール朝の王城都市跡とされ、ジャム川とハリルード川が交わる地点に位置する。イスラム建築のミナレットでは世界第2位の高さを誇るが、十数メートル離れた2つの川の氾濫による地盤浸食の影響を受けやすく危機遺産にも指定されている。
山間部で交通の便が悪く周辺の治安も悪いことから、遺跡の保護作業は06年に中断。その後、現地の作業員に指示を出す形で保護を進めていたが、07年にはハリルード川の洪水で石積みの防護壁が崩れ、川筋がミナレットから数メートルまで迫った。昨年春にも洪水があり地元住民から倒壊を懸念する声が高まった。
政府は昨年11月の調査と並行し、遺跡を保護するため高さ4.5メートル、長さ50メートルのコンクリート堤防を建設。ユネスコ・カブール事務所の長岡正哲文化部主任は「水力工学の専門家の意見も聞き(浸水を防ぐため)防護壁を見直す必要がある」と訴えた。(ジャム=共同)