今のペースで地球温暖化が進むと、海でも水温上昇や酸性化、酸素濃度の低下が進み、今世紀末までに漁業や生態系が深刻な打撃を受ける恐れがあるとの研究成果をカナダ・ブリティッシュコロンビア大などの国際研究チームがまとめ、3日付米科学誌サイエンスに発表した。
世界の平均気温の上昇を2度未満に抑えるという国際目標が達成できたとしても、中緯度の二枚貝や、低緯度の漁業が打撃を受けるリスクが高く、世界から水産資源を輸入している日本人の食生活に影響が出る可能性もある。
チームによると、今の状態の二酸化炭素排出が続けば2090年代の世界の平均海面水温は、19世紀終盤に比べて3.2度上昇する。特に北太平洋、東部熱帯太平洋、北極域の一部で上昇が大きい。
その結果、魚は適温を求めて急速に極方向へ生息域を移し、北極域では今世紀半ばまでに漁獲量の増加に伴って収入が14~59%増える。だが熱帯域では大幅に排出量を減らすことに成功しても、今世紀半ばまでに漁獲量がかなり減少する。ブリティッシュコロンビア大の試算では、日本のマグロ漁獲量と輸入量の合計は50年に約7%減る可能性がある。
また海水に含まれる酸素量は水温が上がると減るため、1990年代に比べて最大3.5%減少し、大半の生物の成長を阻害する。
海水の酸性化も進み、炭酸カルシウムの殻や骨格を持つ生物はそれらが溶けやすくなるなどの悪影響を受ける。最悪の場合、今世紀末には世界の貝類などの漁獲や養殖の損失は千億ドル(約12兆円)を上回るとしている。〔共同〕