【北京=大越匡洋】中国財政省は6日、中国が主導して創設するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の初代総裁候補として金立群・元財政次官(65)を正式に指名したと発表した。金氏はAIIBの設立準備チームのトップを務め、早くから初代総裁に就くと目されてきた。参加各国の同意を得られる公算が大きく、年末の運営開始をめざす組織づくりが本格的に始まる。
金氏は江蘇省出身で、中国財政省で国際畑を長く歩み、財政次官や中国人初のアジア開発銀行(ADB)副総裁を歴任した。ADB時代は黒田東彦総裁(現日銀総裁)にも仕えた。米ボストン大で経済学を学び、流ちょうな英語に定評がある。
AIIBは欧州から英国など17カ国が参加を表明し、創設メンバー国は57カ国に膨らんだ。本格的な国際機関としての体裁を整えた形で、参加国からは「設立準備チームのトップとして世界を飛び回り、各国に参加を呼びかけた金氏の貢献が大きい」との声が上がる。
理路整然とした話しぶりへの各国の信頼は厚く、欧州の参加国の当局者は「金氏以外に、初代総裁として各国の賛同を得られる人物は考えられない」と明言する。
6月29日に署名されたAIIBの設立協定では、総裁の条件についてアジアを中心に37カ国ある「域内メンバー」の国籍を持つこととしている。中国財政省によると、7月31日まで創設メンバー国から総裁候補を募ったうえで、8月下旬に候補者を確定し、年内にも開く第1回総務会で正式に決定する運びだ。
金氏はこれまでAIIBについて「現行の国際金融秩序を推進するもので、転覆を狙うものではない」と強調してきた。総裁は任期5年で、再任が可能だ。初代総裁に就くことはほぼ確実な金氏だが、仮に再任すれば2期目は70歳を超える高齢となる。関係者の間では早くも「金氏が2期やるのか、それとも中国が5年後に2代目候補を出して総裁ポストを握り続ける姿勢を示すのか」に関心が移っている。