【ダマスカス=共同】シリア文化財保護当局トップ、文化省文化財博物館総局のマムーン・アブドルカリム総裁は23日、共同通信の取材に、過激派組織「イスラム国」(IS)がシリア中部パルミラの古代遺跡にある神殿を爆破したと述べた。パルミラに住む複数の同僚らからの情報としている。破壊された映像や写真は公開されていない。
パルミラは紀元前1世紀~紀元3世紀、シルクロードの隊商都市として栄えた古代都市で、1980年に世界遺産に登録された。遺跡破壊が事実であれば、今年5月の同組織によるパルミラ制圧以降、世界中が懸念していた悪夢が現実となった形だ。
アブドルカリム氏によると、破壊されたのはバール・シャミン神殿。同氏は「この神殿に同組織は大量の爆発物を仕掛けて破壊。神殿は地面に崩れ落ちた」と指摘した。バール・シャミン神殿はパルミラ遺跡を代表する神殿の一つで、正面にある大きな柱が特徴。バール・シャミンは雨や豊作をもたらす神を意味するという。
イスラム過激派による遺跡破壊では、アフガニスタンの旧タリバン政権が2001年、世界遺産バーミヤン遺跡の大仏立像を爆破した例がある。中東を代表する世界遺産パルミラ遺跡にある神殿の破壊は、これに並ぶ衝撃となりそうだ。
ISはこれまでイスラム教が禁じる偶像崇拝や多神教につながると主張して、イラク北部にある古代アッシリア帝国のニムルド遺跡や世界遺産ハトラ遺跡などを破壊したとする映像を公開している。