【モスクワ=田中孝幸、ワシントン=川合智之】ロシアがシリアへの軍事介入の度合いを強めている。過激派組織「イスラム国」(IS)掃討の名目でシリアのアサド政権を支援するロシアは7日、これまでの空爆に加えて巡航ミサイルによる攻撃に踏み切った。アサド政権の退陣を求める米国の批判をよそに、ロシアは強硬策に拍車をかけている。米ロの亀裂が一段と深まってきた。
ロシア国防省が公式サイトで公表した巡航ミサイル発射の映像(7日)=AP
冷戦終結後、ロシアが巡航ミサイルを実戦で使用したのは初めてとみられる。
ロシア国防省によるとミサイルは約1500キロメートル離れたカスピ海に展開している4隻の巡洋艦から計26発発射。11カ所の標的をすべて破壊した。ロシア軍は7日もシリア北部や中部での空爆を継続。9月30日の空爆開始からの8日間で112カ所の軍事関連施設を破壊したと発表した。
プーチン大統領は7日、ショイグ国防相にISの掃討に向けて米国やサウジアラビア、トルコなど関係国と協力するよう指示。アサド政権が率いるシリア政府軍との連携を深めるよう求めた。
プーチン氏はフランスのオランド大統領から反政府勢力の自由シリア軍とシリア政府軍が共同で反ISの軍事作戦に当たる案を提案されたとも表明。「興味深いアイデアであり、(両者が)力を合わせることができるなら(シリアの)政治的正常化のための好条件がつくられる」と評価した。
ロシアからの協力呼び掛けに対し、カーター米国防長官は7日、訪問先のローマでの記者会見で「ロシアが何を言おうと、我々はロシアと協力することには合意していない」と強調。IS掃討をうたいながら、実際は親ロシアのアサド政権を支援するため、反体制派を標的にしているロシアの戦略には「悲惨な欠陥」があると指摘した。
カーター氏はシリアでの空爆時に軍用機の衝突を避ける安全面での調整については議論を続ける考えを明らかにした。