放送大学が7月に実施した単位認定試験の問題を学内専用サイトに掲載する際、「現政権への批判が書かれていて不適切」として問題文の一部を削除していたことが21日までに分かった。大学側は、政治的公平を定めた放送法に基づく判断と説明するが、「学問の自由の侵害につながる」と懸念する声も出ている。
大学によると、客員教授を務める東大文学部の佐藤康宏教授(美術史)が担当した「日本美術史」の試験で、7月26日に670人が受けた。問題文の冒頭「現在の政権は、日本が再び戦争をするための体制を整えつつある。平和と自国民を守るのが目的というが、ほとんどの戦争はそういう口実で起こる」と記述した。当時、安全保障関連法が国会で審議中だった。
大学側は7月28日、「学生から疑義があった」として、サイトに掲載する前に削除や修正をするよう求めたが、佐藤教授は拒否。削除を通告した大学側に、佐藤教授は納得せず、客員教授を本年度で辞めると伝えた。
佐藤教授は「自分自身の問題としてとらえてほしいと思って書いた。試験問題まで制約を受けるのは大変遺憾だ」と話している。
一方、来生新・副学長は「放送大学は放送法を順守する義務があり、放送法4条には『政治的に公平である』と定められている。意見が分かれている問題を、一方的に取り上げており不適切」としている。〔共同〕