【ワシントン＝吉野直也】バイデン米副大統領（72）は21日、ホワイトハウスで記者会見し、2016年11月の米大統領選への出馬を見送ると表明した。立候補しても勝機がないと判断した。バイデン氏の不出馬により、民主党は本命候補、ヒラリー・クリントン前国務長官（67）が候補者指名を獲得する公算が大きくなった。

21日、ホワイトハウスでオバマ米大統領（左）の傍らで不出馬を発表するバイデン副大統領（中央）＝ロイター

バイデン氏は記者会見で、次期大統領選に関して「（大統領に立候補するための）窓は閉じられた」と述べ、不出馬を明言した。その理由について「指名を獲得するのに必要な時間がなくなった」と説明した。民主党は今月13日に第１回テレビ討論会を開いたが、バイデン氏は参加しなかった。会見にはオバマ米大統領も同席した。

クリントン氏の支持率が伸び悩むなか、バイデン氏の対応が焦点になっていた。民主党内にはオバマ政権の１期目で国務長官を務めたクリントン氏と、バイデン氏が政策論争で真っ向対立するような事態には懸念もあった。政策の意思決定や、内容そのものを問われることにもなりかねなかった。

民主党の候補指名はクリントン氏と、社会主義者を名乗る無所属のバーニー・サンダース上院議員（74）らが争うが、クリントン氏の優勢は動かない見通しだ。内戦が続くシリアの軍事介入を巡ってはオバマ氏とクリントン氏の立場に開きがあり、この点が浮き彫りになると、共和党に攻撃材料を与える恐れもあった。

半面、民主党内には思想や政策が偏るサンダース氏と、クリントン氏の戦いに不安もある。クリントン氏がサンダースに引きずられる形で、経済格差の是正などリベラル色の濃い政策を打ち出している。政策でリベラル色に肩入れしすぎると本選での支持拡大に支障を来しかねないためだ。

不動産王ドナルド・トランプ氏（69）が支持率で首位を保つ共和党予備選に比べ、民主党予備選の注目度は劣る。予備選が凡戦に終われば、その後の本選にも響く。クリントン氏の支持率は伸び悩む。知名度のあるバイデン氏の出馬により、民主党予備選の話題性が高まれば、票の掘り起こしの期待もあった。

政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が主要な世論調査を集計した最新の世論調査の平均によると民主党の次期大統領候補としてクリントン氏が47.8％で首位。次いでサンダース氏が25.7％、バイデン氏は16.8％にとどまっている。サンダース氏は一部の州では支持率がクリントン氏を上回っており、当初の泡沫（ほうまつ）候補との見方は薄れつつある。