日銀の黒田東彦総裁は30日の金融政策決定会合後の記者会見で、物価上昇率2%という政策目標の達成時期を「2016年度後半ごろ」と説明した。従来は「16年度前半ごろ」としていた。日銀は13年4月の「量的・質的金融緩和」の導入時に2%の物価目標を2年程度で実現すると約束していた。黒田総裁は目標達成時期の先送りに関して「15年度と16年度は原油価格の下落の影響などから下振れている」「主としてエネルギー価格の下振れによる」などと説明。あわせて「物価の基調は着実に改善している」との認識を示した。
今後の金融政策運営については、2%の物価安定目標の実現を目指し「安定的に持続するために必要な時点まで『量的・質的金融緩和』を継続する」と説明。さらに「上下双方向のリスク要因を点検し、必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく調整する」との方針を改めて示した。
日銀は30日の会合で、日本経済の17年度までの見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめた。政策委員の大勢見通し(中央値)は消費者物価指数(CPI)上昇率は生鮮食品を除く総合で15年度を前年比0.1%、16年度を1.4%に下方修正した。7月時点で示した従来見通しはそれぞれ0.7%、1.9%だった。17年度は消費税率引き上げの影響を除いた場合で1.8%に据え置いた。
実質国内総生産(GDP)成長率は15年度1.2%、16年度1.4%、17年度を0.3%の見込み。従来は15年度が1.7%、16年度が1.5%、17年度が0.2%だった。黒田総裁は15年度の成長率下振れの理由を「新興国経済の減速を背景とした輸出のもたつきや天候不順の影響」と指摘した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕