【フランクフルト=加藤貴行】独フォルクスワーゲン(VW)子会社の高級車メーカー、独ポルシェは4日、新型の電気自動車(EV)開発に10億ユーロ(約1340億円)を投じ、2020年までに発売すると発表した。VWが10月に排ガス試験の不正を受けて電動車両を重点的に開発する方針を示して以降、具体的な大型投資が決まったのは初。EVで存在感を増す米テスラ・モーターズなどに対抗する形になる。
ポルシェが発表したEVのコンセプト車「ミッションE」(9月のフランクフルト国際自動車ショー)
新型EVは、9月のフランクフルト国際自動車ショーで披露したコンセプト車「ミッションE」をベースに開発する。独南部シュツットガルト近郊の主力工場に7億ユーロを投じ、組み立てや塗装などの設備を増設。1千人の新規雇用を見込む。
ミッションEは1回の充電で500キロメートル以上の走行が可能。15分で電池の8割まで充電し、ワイヤレス充電でもできる。スタートから時速100キロメートルに達するまでの時間が3.5秒と、同社の看板のスポーツカー「911」より速い。
VWは傘下の高級車ブランドに先端技術を導入し、段階的に他の大衆車ブランドに普及させてきた。排ガス不正を受けグループ全体の投資は圧縮する方針だが、他社との競争や環境規制の対応のため、高級車の電動化の投資は引き続き重視する姿勢を鮮明にした。
傘下の独アウディも1回の充電で500キロメートル走行できる多目的スポーツ車(SUV)のEVを18年に投入する計画。ポルシェやアウディの新型EVは高額とみられるが、短い走行距離の弱点があるEVの弱点を克服した車両の投入が進み、自動車の電動化を後押しすることになりそうだ。