【ニューデリー=堀田隆文】インドのモディ首相は25日、ニューデリーでフランスのオランド大統領と会談し、仏と共同で進めるインド国内での原子力発電所の建設事業について、2017年にも着手することで合意した。電力不足が深刻なインドは原発の増設を急いでいる。日米もインド市場への進出を狙っており、フランスとの競争が激しくなりそうだ。
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25日、インドのモディ首相(右)と会談したフランスのオランド大統領(ニューデリー)=AP
オランド大統領はインドが現行憲法の発布を記念して毎年開いている「共和国記念日」の式典に参加するため訪印した。
「フランスはインドが原子力協定を結んだ国の一つ。防衛など戦略的な分野でも、信頼できるパートナーだ」。モディ氏はオランド氏と会談したあとの声明で、フランスとの原子力協力の進展を最大の成果の一つとして強調した。
印仏は08年に民生用分野で原子力協定に署名した。09年には仏の原子力機器大手アレバがインド国有企業との間で、印西部マハラシュトラ州ジャイタプールに建設する原発を共同開発することで基本合意した。
だが、計画は進んでいない。アレバの経営危機など仏側の事情に加え、インド政府内でも調整が難航したためだ。
今回の共同声明のなかで、両国はジャイタプールでの原発開発について、フランスが最新型の原子炉6基を供給すると改めて明記した。17年初めにも具体的な開発計画に着手する。期間を区切り、開発を加速する意向を鮮明にした。
インドは原発開発を急ピッチで進めている。国内では21基の原発が稼働しており、発電能力は578万キロワット。政府は32年までにこれを10倍超に増やし、国内の総発電量に占める原発の比率をいまの約3%から2桁台に高める考えだ。
背景には、深刻な電力不足がある。電力供給は需要を約1割下回る状況が続いており、主力の火力発電では今後の需要拡大を賄えないのが確実だ。モディ首相は雇用拡大に向け、製造業育成策「メーク・イン・インディア(インドでつくろう)」を進めるが、電力不足が解消しなければ実現はおぼつかない。原発開発は経済活性化に向け、避けて通れない国策と位置づけられている。
仏側は、インドへの原発供給を確実にすることで、自国の原発輸出に弾みをつける意向だ。フランスにとって原子力産業は自動車や航空・防衛部門と並ぶ一大産業で雇用も多い。17年に大統領選を控えるなか、現政権には有権者に実績をアピールしたい思惑もある。
モディ氏とオランド氏は首脳会談で、安全保障、テロ対策の分野での関係強化でも合意した。昨年4月のモディ氏の訪仏時に合意した仏戦闘機「ラファール」36機をインド側が購入する件について、改めて両国間で合意文書を交わし、価格等の諸条件を早期に詰めるとした。
インドは国民の1割強をイスラム教徒が占め、国内でイスラム過激派が活動しているとの懸念も高まっている。昨年11月、過激派組織「イスラム国」(IS)によるパリ同時テロに見舞われたフランスの事情を受け、モディ首相は「我々はぞっとするようなテロ組織の挑戦を受けている」とし、テロ対策で協力していく方針を明らかにした。