【香港=阿部真也】経営難に陥っていた香港の老舗テレビ局、亜洲電視(ATV)が1日深夜で地上波放送を終えた。広告収入が低迷し、従業員への給与未払いも発生。香港政府は2015年4月、ATVの放送免許更新を認めないことを決めていた。
ATVの前身の麗的映声は1957年に開局し、中華圏で最も長い歴史を持つテレビ局として知られる。多くの香港スターも輩出したが、90年代以降は度重なる経営陣の交代で失速した。視聴率の低下で番組スポンサーが激減し、14年秋以降は従業員への給与遅配が頻発していた。
11年には中国の江沢民・元国家主席が「死去した」と誤報。ATVの実質的なオーナーが江氏に近いとされていたことから様々な臆測を呼んだ。この誤報を巡っては当局から罰金を科された。
政府は通信最大手PCCW傘下の香港電視娯楽(HKTVE)に新規免許を交付しており、同社は6日から無料テレビ放送「ViuTV」を始める。自社製作のバラエティー番組のほか、日本や韓国のドラマなどを放送し、若年層の取り込みを狙う。HKTVEは今後10年間で27億香港ドル(約390億円)を投じる方針で、地上波で1強状態にある電視広播(TVB)に対抗する構えだ。