地震で崩れたとみられる阿蘇神社の建物=16日午前7時11分、熊本県阿蘇市、朝日新聞社ヘリから、高橋雄大撮影
阿蘇山の北側の熊本県阿蘇市では、国の重要文化財に指定されている阿蘇神社の2階建ての楼門が倒壊した。柱は折れてつぶれ、屋根は大きく傾いた。拝殿も全壊し、3カ所の神殿も損壊したという。
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神職の内村泰彰さんは16日午前1時25分ごろ、境内裏の宿舎で寝ていたところ、いきなり激しい横揺れに襲われた。揺れが収まり、身の危険を感じて外に出ると、目と同じ高さに崩れた拝殿の屋根などがあった。「揺れた時、境内も無事では済まないと直感した。パニック状態です」
市内ではライフラインが寸断された。高齢者29人が入所する特別養護老人ホーム「ひのおか順心館」では、電気と水道が止まり、部屋からのナースコールができなくなった。ベッドをリビングに持ち込むなどして対応しているという。水はペットボトルが計120リットル分あるほか、小型のタンクもあるが、何日もつか分からないという。職員の山本博子さん(35)は「停電してラジオも聞けず、情報が入らない」と話した。
阿蘇市永草の永草公民館には1家族5人が避難した。公民館で住民の対応をした高藤拓雄さん(69)によると、一帯では水道と電気が止まったが、公民館に水や食料の備蓄はないという。高藤さんは「市役所に何回か電話したが、つながらない。救援物資を早く頼みたいのに困っている」と話す。
阿蘇市一の宮町手野にある温泉施設「一の宮温泉センター」の管理人の男性によると、周辺では古い民家などが複数倒壊し、ブロック塀が崩れたという。近くの後藤とも子さん(67)は、激しい横揺れで目を覚ました。揺れは30~40秒続いたように感じた。地域の人たちは公民館前に集まり、朝を待ったという。自宅は瓦が落ち、土壁がはがれ、ブロック塀が倒壊。停電が続き、水道からは泥水が出ているという。「食べ物も飲み物もない。携帯電話の電池ももうすぐ切れそう。どうしたらいいか分からない」
阿蘇市の阿蘇医療センターには16日午前6時すぎ、家が倒壊した南阿蘇村の現場から、若い男性2人が救急車で搬送されてきた。2人は重傷だが、意識はあるという。