地震で棚の商品が床に散乱した由布院温泉のハチミツ専門店=16日、大分県由布市、柴田秀並撮影
九州を襲った強い地震は、主力産業の観光業に深刻な打撃を与えている。全国有数の温泉地を抱える熊本、大分両県のホテル・旅館には、宿泊予約のキャンセルが相次ぐ。稼ぎ時のゴールデンウィーク(GW)を前に、九州の観光業界は不安に包まれている。
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熊本県阿蘇市の「阿蘇プラザホテル」は、15日から休業している。16日の地震で壁の一部が破損し、電気や水が止まった。予約客に連絡しようにも、パソコンで予約リストを確認することができない状況だ。
JTB九州によると、熊本市内や阿蘇地方の今後1週間分のツアーや宿泊予約のキャンセル率は、「ほぼ99%に達するだろう」(広報)という。
大分県の別府温泉。別府市旅館ホテル組合連合会によると、加盟する施設のほとんどで、15~16日の宿泊予約の半分以上がキャンセルになった。1カ月に約6万人が宿泊する老舗の「杉乃井ホテル」も、GWの予約を含めて4千人近くの宿泊がキャンセルに。温泉の配管が破損して休業する旅館も出ており、同組合連合会の堀精治事務局長は「余震が早く落ち着いてくれたらいいが」と声を落とす。
由布院温泉(大分県)の観光名所「湯の坪街道」では16日、みやげ物店の大半が休業していた。ハチミツ専門店「ビービーズ」の店内には、棚から落ちた商品が散乱。通りに観光客の姿はほとんどなく、店長は「オープンして10年以上になるけど、こんなに閑散としたのは初めて」と話す。
影響は九州全域に及んでいる。鹿児島県の指宿温泉。旅館「指宿白水館」では、16日に宿泊予定だった約450人のうち約100人がキャンセルした。九州新幹線や九州道の不通が影響しているという。
外国人観光客の中には、予定を早めて帰国する人も出てきた。長崎市の「ANAクラウンプラザホテル長崎グラバーヒル」の広報担当は、「海外のお客様は慣れない地震に敏感だ」。
福岡市の「ホテル日航福岡」では、1カ月以上先の予約もキャンセルが出始めた。その多くは外国人で、「福岡を起点に周遊するつもりだった外国人客が、旅行そのものを取りやめている」(広報担当)。