熊本への思いを語る行定勲監督=19日午後、東京都千代田区有楽町の日本外国特派員協会、安冨良弘撮影
映画監督の行定勲さん(47)が故郷・熊本で今回の地震に遭遇。その体験を19日、国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2016」の記者会見で語った。
被災した故郷へ…熊本地震、あの著名人がつづった願いと決意
「被災者の方々は余震におびえている。私も東京に戻ってきて、建物がきしむ音でも構えてしまう」。行定監督は15日に仕事のため熊本に入り、16日未明の地震の際は、熊本市内のホテルの10階にいたという。余震が続く中、一晩を過ごしたロビーでは台湾や韓国から来たとみられる観光客が隅で肩を寄せ合って震えている姿を目にしたという。
今回の映画祭で上映される短編「うつくしいひと」は、熊本県出身の俳優・高良健吾さん、橋本愛さん、政治学者の姜尚中さんらが出演するオール熊本ロケの作品。被災前の美しい熊本城が何度も登場する。
会見後、朝日新聞のインタビューに応じた行定監督は「今報道されている痛々しい姿ではなく、悠然たる熊本が描かれている」と説明。「熊本県民は必ずこの姿を取り戻そうと思っているはず。そういう決意表明につながっていけばこの映画の意味がある」と語った。
行定監督は熊本で高齢の女性に「(熊本を)撮ってくれてありがとう」と声をかけられたという。女性は「熊本城は今後20年間は元の姿にもどらないと聞いた。私が生きている間には見られない」と話したといい、行定監督は「映画が記憶する風景というのは非常に偉大なんだということを知った」と話した。(山本晋)