荷物運びのボランティアをする鎮西高の選手たち
![写真・図版](http://www.asahicom.jp/articles/images/AS20160425003211_commL.jpg)
熊本地震がスポーツ界にも影を落とす中、一昨年の春の選抜高校野球大会に出場した鎮西(熊本市)の選手が25日、震度7を観測した熊本県益城町でボランティア活動を始めた。益城町内にある鎮西の野球場も内野に亀裂が走って大きな被害を受けたが、「まず地域の復興」と立ち上がった。一方、熊本の高校野球が日常を取り戻すには時間がかかりそうで、夏の主会場となる藤崎台県営球場(熊本市)は一部破損している。
「ひどいな」。ボランティアに向かう途中、立ち寄った野球場の様子に鎮西の選手たちは言葉少なだった。2本の亀裂が一塁あたりから遊撃、左翼方向へ走り、外野は波打っている。「少し前まで普通に使っていたのに」と、副主将の米田大雅(3年)はつぶやいた。
ボランティアを考えついたのは、学生コーチの江入圭祐(3年)だった。14日夜、熊本市の寮で仲間と夕飯のすき焼きを食べているときに前震にあった。実家の阿蘇市に帰ると16日未明、本震に見舞われた。避難生活が一段落したとき、「自分よりもっと困っているだろうな」と、「地元」の益城町のことが頭に浮かんだ。
「野球はいつか終わる、野球より大事なことがある、と教えられてきた。考えれば、今は野球じゃないと思えて」。ラインで仲間に「何かしよう」と呼びかけると、都合のつく1~3年まで40人が集まった。
学校行事でも部活動でもない。有志の熱意に賛同した江上寛恭監督が運転するバスに乗り、益城町入り。25日は町役場の近くで救援物資の運び出しを手伝った。
地震で県の諸大会は相次いで取りやめになり、3年生にとっては夏の選手権だけになった。主将の上田大雅(3年)は「この活動でチームワークがより強くなるのではないかと思う」と引き締まった表情で言った。
熊本市内の公立高校は5月9日ごろまで多くの学校が休校する。5月10日に開幕が延びた九州地区大会代表の私学2校のうち、選抜4強の秀岳館(八代市)は5月8日まで休校。寮に入っている熊本県外の選手は帰郷し、自主練習をしている。鍛治舎巧監督は「どんな練習をしているかSNSで報告してくる。みんな自分で考えながらしっかりやっている」と話した。九州学院(熊本市)は26日から登校日で、登校した選手はグラウンドに集合する予定という。
県の高校野球関係者が気をもむのは、夏の選手権地方大会の舞台となる藤崎台県営球場(熊本市)の状況だ。左翼外壁の石垣が膨らみ、バックスクリーンが損壊するなどした。今週中に全体の危険性を専門家に判定してもらうことになっており、5月10日までの休場が決まったが、修復のスケジュールはこれからになる。
1960年の完成以来、外野の大クスノキに見守られながら多くのドラマを生んできた球場。「夏までに間に合わせたい」と県関係者。県高野連は藤崎台が使えなくても、夏の地方大会は県内で開きたいとしている。(隈部康弘)