墳丘に亀裂が入った井寺古墳。雨水が入らないようにシートで覆われていた=26日午前10時9分、熊本県嘉島町
熊本地震によって、レリーフや彩色で内部を飾った希少な装飾古墳に被害が出ている。熊本県内の自治体が調べたところ、少なくとも10基で確認された。特殊な文様で知られる国指定史跡の井寺(いでら)古墳(嘉島町)は、墳丘の土に亀裂が入り、崩れる恐れがあるという。
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全国の古墳約20万基のうち、装飾古墳は650基ほど。熊本県には最多の195基が集中している。
井寺古墳(5世紀後半~6世紀初頭)は、江戸末期の地震で土に隠れていた通路が現れて、見つかったとされる。直径25メートル、高さ5メートルほどの円形で、内部は直線、弧線、同心円の文様が施されている。
町によると、墳丘に幅30センチほどのYの字の亀裂が入り、割れ目から石が露出した。石室の可能性がある。入り口に取り付けた金属製の扉に内部の石材がもたれかかっており、開けると崩れ落ちる恐れがあるという。
このほか、国指定史跡の釜尾(かまお)古墳(熊本市)、オブサン古墳(山鹿市)、県指定史跡の御霊塚古墳(同)などでも亀裂や天井の石材が落ちるといった被害があった。県文化課は「余震で危ないため、内部の詳しい確認はできていない」という。
大塚初重・明治大名誉教授(考古学)は「井寺古墳は最も有名な装飾古墳の一つ。文化庁と連携して早めに対処して欲しい」と話している。(阿部彰芳)