飾り馬を作る人形師、粟生正樹さん=愛知県岡崎市
五月人形の脇役、飾り馬やちょうちんなどの飾り物が「絶滅」の危機にある。需要が細り、伝統を守ってきた職人が減っているためだ。「端午の節句の意味が忘れられている」と関係者は嘆く。
愛知県岡崎市の人形師、粟生(あおう)正樹さん(75)は、貝殻を使った顔料「胡粉(ごふん)」や和紙を使った伝統技法で、飾り馬を作ってきた。出荷するのは年間200体程度。オイルショック前の最盛期と比べると、半分以下に減った。
「一騎当千と言ってね。侍にとっては、馬は立身出世の象徴。勇ましく育ってほしいと、何体もずらっと並べる人もいたよ。夢が、いらなくなったんだね」
今では、伝統技法で飾り馬を作るのは、全国でも3軒ほど。粟生さんの長男も人形師にはなったが、ひな人形を作る。