「一部がアートと認められたのは良かった」と会見で話す五十嵐恵被告=東京都千代田区
「自分の活動を裁判官に理解してもらえるか不安だったが、アートと認識してくれたことはうれしかった」。判決後に東京都内で会見した漫画家の五十嵐恵=ペンネーム・ろくでなし子=被告(44)は笑顔を見せた。一方で、「わいせつではなく芸術活動だ」という無罪の主張は、一部で退けられた。「自分の体の一部が『わいせつな物』というのはおかしい、と思ってずっと活動してきた。無罪の理由が『女性器に見えないから』というのは納得できない」とも話した。
ろくでなし子被告、女性器作品の陳列無罪 データは有罪
ろくでなし子被告に一部無罪 判決の要旨
弁護団の山口貴士弁護士は「わいせつ性が問われた刑事裁判で一部でも無罪になったのは非常に珍しい。画期的な判決だ」と評価。だが判決は、有罪とした3Dデータの配布について「データを使って創作活動をしてもらいたいという被告の意図が、かえってデータのわいせつ性を高める可能性も否定できない」とも指摘した。主任弁護人の須見健矢弁護士は「最低限の結果は出たが、一部が有罪になったことで創作活動に対する萎縮効果もある。控訴審で引き続き頑張りたい」と話した。(千葉雄高)
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《今回の事件に関する共著がある園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法)の話》 判決はわいせつ性について、従来の判例の流れに忠実に判断した。3Dデータについては、アダルトグッズに使われる可能性があるなど社会的に様々な問題を投げかけていることも考慮して有罪としたのではないか。ただ、ネット上に過激な性表現があふれる中でどこまでこうした規制をするのかや、そもそも裁判所が芸術性を判断してよいのかなど、この種の裁判にまつわる根本的な疑問は残る。