第57次南極観測隊に同行した渡辺浩志さん=本人提供
南極大陸の環境や生物などを調査する南極地域観測隊で、俳句が静かなブームになっている。俳句が盛んな愛媛県の県立新居浜西高校の理科教諭、渡辺浩志さん(53)が昨年から今年にかけて、第57次観測隊に同行したのがきっかけ。南極の自然や昭和基地の日常を詠んだ隊員らの句は、「南極吟行句」と題し、愛媛県で発行されている俳句誌で紹介されている。
南極へ頰染めしらせいざ往かん
昨年11月、自らが乗ることになる南極観測船「しらせ」が海上自衛隊横須賀基地(神奈川県)から出港したのを記念し、渡辺さんが詠んだ一句だ。「オレンジ色の船体からぱっとひらめいた」という。
渡辺さんは小学生の頃から南極に憧れ、大学では地球科学を専攻。教員になってからも南極への思いを持ち続けた。国立極地研究所などが2009年度に始めた教員の派遣プログラムに応募し続け、5回目で夢がかなった。南極では昭和基地から衛星回線を使って、日本の高校生に「南極授業」をしたり、研究者らに同行して基地設営や観測業務にあたったりした。
「南極にいる隊員が詠んだ句を紹介できれば面白いかも」。渡辺さんの南極派遣決定を伝える朝日新聞愛媛版の記事を目にした松山市の俳句雑誌「100年俳句計画」の編集長キム・チャンヒさん(47)はそう考え、渡辺さんに昨秋、南極吟行句を依頼。句作経験がなかった渡辺さんは最初はとまどったが、「南極や、俳句が盛んな愛媛のPRになれば」と快諾した。
俳句の練習をする間もなく、昨年暮れにオーストラリアから「しらせ」に乗り、昭和基地入り。大陸を覆う氷が海の上まで張り出す「棚氷」や、天候不良で遅れるヘリを待つ様子を、こう詠んだ。
海原にぽつんとひとり棚氷