シーア派住民が多いバグダッドの「サドルシティー」で11日、爆発の現場に集まった人たち=AFP時事
イラクの首都バグダッドで11日、自動車を使った自爆テロとみられる爆発が3カ所で相次ぎ、少なくとも93人が死亡、165人がけがをした。いずれも過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。AP通信などが報じた。首都でのテロとしては今年最悪の規模になった。
特集:「イスラム国」
最初の爆発は、イスラム教シーア派住民が集中する首都東部の「サドルシティー」と呼ばれる地区で起き、少なくとも63人が死亡した。現場は隣接する美容院と理髪店の前で、結婚式の準備中だった花嫁や花婿が複数犠牲になったとみられる。同地区は、スンニ派を標榜(ひょうぼう)するISが、これまでも攻撃対象としてきた。
ISはイラクとシリアで拠点を政府軍に奪還されるなど劣勢のなか、市民を狙った無差別テロに注力している。ロイター通信が伝えた国際情報会社IHSの調査によると、両国で今年1~3月に自爆テロなどを計891件起こした。ISによるテロの3カ月間の集計としては過去最多だった。
死者は計2150人に上り、直前の3カ月間に比べ44%増加。同社の担当者は「ISは(米欧の空爆など)複数の圧力を受け、多くの死傷者を出す暴力に力を向けている」と指摘した。
米軍によると、ISは2014年に比べ、イラクで40%、シリアで20%、それぞれ支配地域を減らした。イラクでは昨年12月に西部の都市ラマディを、シリアでは今年3月、中部パルミラなどをそれぞれ政府軍に奪還された。
ISが繰り返しているのは、自動車などを使った自爆テロで市場などを狙い、民間人を多数殺害する手口だ。事件後に「イスラム教シーア派の民兵を狙った」などと宗派対立をあおる犯行声明を出し、事件の正当性を主張することが多い。(ドバイ=渡辺淳基)