改正道交法による認知症対策
改正道路交通法で、75歳以上の運転者が特定の交通違反をした場合に臨時の「認知機能検査」が義務づけられる。警察庁は12日、対象となる交通違反を一時不停止や信号無視など18の行為とする政令案をまとめた。検査で認知症の恐れがあると判定されれば医師の診断を受けなければならず、発症していたら免許は取り消しか停止される。
改正法は、認知症かどうか医師の判断を求める機会を増やす狙いで、昨年6月に成立。来年3月に施行される見通しで、同庁は13日から6月11日まで一般の意見を募る。
認知機能検査は記憶力と判断力を調べる筆記式のテストで、各能力が低い「1分類」、少し低い「2分類」、問題ない「3分類」で判定される。政令案が決定されれば、18の交通違反をした75歳以上の運転者に検査が義務づけられる。1分類と判定された場合、医師の診断を受けなければならなくなる。
このほか、現在は3年に1度の免許更新時の検査で1分類と診断されても、逆走などの交通違反をしない限り医師の診断を受ける必要がないが、改正法では、違反の有無に関係なく診断を受けなければならなくする。検査や診断を受けないと、免許停止、取り消しの対象になる。
警察庁は、2014年までの5年間に認知機能検査を受けた75歳以上のお年寄りによる160万件余りの違反のうち、3分類よりも1、2分類の違反率が高かった行為を抽出し、認知症専門医らの意見も踏まえて18の交通違反を選んだ。
警察庁によると、昨年は163万709人が認知機能検査を受け、5万3815人が1分類とされた。このうち医師の診断を受けたのは1650人にとどまるが、診断の結果、約3分の1の564人が免許取り消しや停止となった。2014年に死亡事故を起こした75歳以上の運転者の4割近くで認知機能が低下していたとの分析もあり、認知症対策は課題となっていた。
また、警察庁は12日、改正法で新設される免許区分「準中型」(車両総重量3・5トン以上7・5トン未満)について、中・大型に準じた内容の技能試験を課すことも決めた。普通(同5トン未満)免許を持っている人は4時限の技能教習を受けて審査に合格すれば、7・5トン未満の車まで運転できるようになる見通しだ。(伊藤和也)
■臨時の認知機能検査が義務づけられる18の交通違反
・一時不停止
・信号無視
・一方通行の道路を逆から通行するなどの通行禁止違反
・逆走や歩道の通行などの通行区分違反
・わき見や操作ミスなどの安全運転義務違反
・一時停止しないなど踏切での違反
・黄線を越えてレーンを変更する違反
・右折レーンから直進するなどの指定通行区分違反
・横断歩道で一時停止せず歩行者の横断を妨害
・横断歩道のない交差点で歩行者の横断を妨害
・交差する優先道路の車の通行を妨害
・対向車の直進を妨げて右折するなど交差点での優先車妨害
・右左折などの際にウィンカーを出さない合図不履行
・禁止場所で転回するなどの横断等禁止違反
・徐行せず左折するなど交差点で右左折する際の方法違反
・徐行すべき場所で徐行しない違反
・環状交差点内の車などの通行を妨害
・徐行しないなど環状交差点を通行する際の方法違反