親子で実家の片づけ
高齢の親が暮らす実家の片づけをどうするか。中高年の子世代の多くが向き合う問題です。心構えやコツをプロに聞きました。
親も子も体力があるうちに始めたい。親が亡くなった後の遺品整理は大変だ。そう頭でわかっていても、「片づけよう」と親に言うきっかけがつかめない。そんな人は少なくない。
実家片づけ整理協会(東京都)代表理事の渡部亜矢さんは、コミュニケーション不足気味の親子の場合、「防災」を口実にすることを勧める。例えば「テレビで地震のニュースを見たから心配になって」などと切り出し、「いざというとき危なくないように片づけようか」「貴重品をまとめておけば」など、さりげなく持ちかける。実家のリフォームの話題が出たときなども好機だという。
親がやる気になっていざ着手というとき、まず考えたいのが片づけの順番だ。
渡部さんによると、よくあるミスは押し入れや納戸から手をつけること。しまい込んである趣味の品々や衣類、アルバムなどが出てくると、遅々として進まないばかりか、捨てる、捨てないでいきなり親子ゲンカになりかねない。庭や玄関先など、親の心理的な抵抗が少ない場所やモノから取りかかるのが挫折を避けるコツという。
トラブルになるのを避けるために、片づけ中に口にしがちな「NGワード」に気をつけたい。例えば「いつか使うっていつよ?」。片づけの主体はあくまで親。捨てるのに抵抗感がある親世代の価値観を否定してはいけない。いきなり「通帳、どこ?」などとお金の話をするのも禁物だ。
一般的に、片づけは「いる」「いらない」の2分類で考えがち。生前整理普及協会・代表理事の大津たまみさんは、長年の経験から「この2分類で考えると片づかない」と話し、この二つに「迷い」「移動(思い出)」を加えた「4分類仕分け法」を勧める。
「迷い」とは、残すか手放すかすぐ判断がつかないモノ。「8秒間で結論がでなければ『迷い』に分類してください」と大津さん。迷いに分類した品は箱などにまとめ、半年後に改めて考えるとよいという。
「移動(思い出)」とは、思い出の品として残すと決めたモノ、もしくは他の部屋や物置に移動させるモノだ。家中にちらばっている思い出の品は、できるだけ「思い出箱」にまとめて保管する。
片づけ・整理の対象はモノだけではない。最終課題として残るのが、親の人間関係や財産情報など、情報の「見える化」だ。親の葬儀のとき、誰に連絡してよいかわからず困ったという人は少なくない。
大津さんは「親にとって大切な人を知るには、年賀状など手紙類の整理を手伝うとスムーズです」と助言する。パソコンなどでリストにし、親との関係性やキーパーソンを把握しておければ安心だ。(清川卓史)