米大統領選で共和党の候補者指名が確実となった実業家のトランプ氏(69)に二つの逆風が吹いている。透明性の観点から過去の候補が明らかにしてきた納税申告書の公表を拒否。過去の女性遍歴を語る音声テープも公開され、「自分の声ではない」と防戦を余儀なくされている。
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納税申告書の公開は義務ではないが、大統領候補が公表するのが慣例。しかしトランプ氏は、米内国歳入庁(IRS)の監査中だとして公開を拒否。13日のテレビでも、有権者が申告書を見る権利について問われ、「そうは思わない」とし、適用される所得税率も「あなたの知ったことではない」と答えなかった。
納税申告書の公表では、2012年の共和党候補のロムニー氏の所得税率が多くの納税者より低い14%だったことから、オバマ陣営に裕福で庶民の気持ちが理解できないと攻撃を受けた。トランプ氏の指名獲得に反対する共和党のロムニー氏は、「外国企業や犯罪組織などとの不適切なつながりがあるからではないか」と批判している。
一方、ワシントン・ポストは、トランプ氏の広報担当者を名乗る男が1991年当時、同氏が複数の女性と交際していることなどを電話取材で語った録音テープを公開。トランプ氏と語り口がそっくりで、本人ではないかという疑惑が持ち上がっている。トランプ氏は自分ではないと主張しているが、本人なら物議をかもしそうだ。(ワシントン=佐藤武嗣)