スミソニアン航空宇宙博物館の分館に展示されているエノラ・ゲイ=米バージニア州シャンティリー、ランハム裕子撮影
オバマ米大統領の広島訪問は、原爆をめぐる米国内の歴史認識を問う機会にもなる。投下の判断や原爆による被害を、博物館などでどのように示すべきかについては、これまでも論争が起き、今もなお議論が続いている。
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■鈍く光るエノラ・ゲイ
ホワイトハウスから約35キロ。ワシントンの空の玄関口、ダレス空港の近くにスミソニアン航空宇宙博物館の分館はある。71年前、原爆を広島に投下した爆撃機「エノラ・ゲイ」は銀色の機体を鈍く光らせ、博物館の中央近くに展示されている。全長約30メートル、重さ約32トンの機体は周りの小型機に比べ、ひときわ大きい。
ホワイトハウスがオバマ大統領の広島訪問を発表した10日の午後、老夫婦が腕を組みながら、機体をじっとみつめていた。
「大統領が広島を訪問することを知っていますか」と尋ねると、2人は驚いた様子を見せた。
「本当にすばらしい。オバマ大統領が米国の原爆投下を認知し、それによって殺された多くの人への哀悼を示すことは、象徴的な行動だと思う」と妻のアリス・ビドウェルさん。そして「でも、原爆によって多くの米国人や日本人の命が救われたことは、そんなに知られていない。私の父の命も、原爆によって救われたの」と続けた。