国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の開門をめぐる訴訟で、国が開門に代わる和解案として、漁業環境の再生に使う基金の創設を提案することが分かった。23日に長崎地裁で開かれる和解協議で示す。金額は提示しないとみられるが、数十億円規模になる可能性がある。
国が提案するのは「有明海振興基金」(仮称)。福岡、佐賀、長崎、熊本の4県や漁業団体などが運営に関わり、有明海の漁業環境改善に使うことを目的にする。堤防完成後に漁獲が落ち込んでいる二枚貝を増やすため、海底に砂をまいたり、稚貝の放流をしたりすることなどを想定。複数年度にわたる事業でも実施しやすくする狙いがある。
同訴訟は、干拓農地の営農者らが国を相手取り、排水門を開門しないよう求めて提訴。地裁は1月、開門せずに解決を目指す和解勧告を開門反対派と国、訴訟に補助参加している開門派の漁業者らの3者に示していた。ただ、開門派は「開門以外の解決策はない」との姿勢を崩しておらず、和解に向かうかは不透明だ。
開門問題では、国に開門を命じた福岡高裁の確定判決と、開門を差し止めた長崎地裁の仮処分決定の相反する司法判断が出された。現在、国は開門命令に従わない「罰金」として、高裁の原告漁業者に1日90万円を支払っている。