イランを訪問中のインドのモディ首相は23日、イランのロハニ大統領とテヘランで会談し、イラン南東部チャバハール港への投資で合意した。完成すれば、インドは対立するパキスタンを迂回(うかい)してアフガニスタンや中央アジア方面との交易が可能になる。存在感を強める中国とパキスタンへの対抗意識が背景にある。
共同会見でロハニ氏は「チャバハール港の開発は両国協力の象徴だ」、モディ氏は「地域の和平と安定に向けた歴史的な機会だ」と述べた。さらに、アフガニスタンのガニ大統領も遅れてテヘラン入りし、3者会談が行われた。
この日、同港に総額5億ドル(550億円)の投資を表明したインドは、アフガンで道路も整備。パキスタンを通さずアフガンやイラン、さらに中央アジア方面と交易するルートの建設を目指す。イランからアラビア海の海底を通して天然ガスや石油のパイプラインを直接引く構想もある。
イランはチャバハールを経済特区として売り込み、日本もイランの天然ガスを利用した化学肥料工場などを検討。韓国は製鉄所の建設を表明している。
一方、パキスタンは中国から5兆円規模の投融資を受け、チャバハールの東約70キロのグワダル港と中国を結ぶ経済回廊を建設中だ。中国にとってグワダルは、インド包囲網「真珠の首飾り」の拠点の一つで、イランでもホルムズ海峡のゲシュム島を開発。インドは神経をとがらせている。
これに対して、イランは両にらみだ。核開発を巡って科されていた制裁が1月に解除されたが、欧州や中国への原油輸出が伸び悩む。また、チャバハールを含む南東部は最も開発の遅れた地域で、インドへの期待は大きい。他方、パキスタンとは天然ガスのパイプライン建設を共同で進める。中国とも良好な関係にある。(テヘラン=神田大介、ニューデリー=貫洞欣寛、イスラマバード=武石英史郎))