同じ方向を向いてゆらゆらと揺れるチンアナゴ=竹谷俊之撮影
スリムで長い体をゆ~らゆら。水族館の人気者・チンアナゴは、とても臆病な性格だ。ダイビング中に、遠くから姿を見ることがあっても、接近して眺めるのはまず困難。ダイバーが、空気のぶくぶく音を立てただけで、砂の穴の中に、スッと引っ込んでしまう。
そんなチンアナゴを、うんと近くで見てみたい。東京スカイツリータウンにあるすみだ水族館(東京都墨田区)で、360度の動画撮影用カメラを使って至近距離から撮影した。水槽の砂の中にカメラを埋めるようにして撮影しているので、チンアナゴの動きを見上げるような映像になった。
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すみだ水族館は、チンアナゴやニシキアナゴなどの計約600匹を深さ1.3メートル、縦5.5メートル、横80センチの大型水槽で展示している。
チンアナゴは、南日本の暖かい海の砂地に生息。流れにのって漂う動物プランクトンを食べるため、いつも、そろって同じ方向を向いているのも特徴だ。顔の下のほうにある、黒い斑点から出てくるのは糞(ふん)。エサと間違えて食らいつき、慌ててはき出すドジなチンアナゴも見かけた。
最初は、警戒心が強いチンアナゴの近くにカメラを埋めると出てこなくなるのではと心配した。案の定、一斉に砂の中に隠れてしまったが、数分後に1匹目がニョキニョキと姿を現した。10分ほどたつと何事もなかったように数百匹が砂から顔を出し、カメラの周りを漂った。
飼育スタッフの柿崎智広さんによると、水族館ではチンアナゴが人に慣れるよう、オープン前に複数の飼育スタッフが水槽のまわりを歩いたり立ち止まったりしたという。この日も、青森県深浦町から訪れた三浦恵留(めぐる)さん(23)が3分近く水槽に顔を近づけて眺めていたがチンアナゴは平気な様子。「初めて見たけど、思っていたより長い。このニョロニョロしている感じがたまらない」と間近での観察を楽しんでいた。
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<チンアナゴ> アナゴ科の魚で砂地に穴を掘ってすむ。長さは30~40センチほど。チンアナゴの名は「顔」が小型犬の狆(ちん)に似ていることが由来とされる。姿が数字の1に似ていることから、11月11日を「チンアナゴの日」として、すみだ水族館が2013年に一般社団法人「日本記念日協会」に申請、認定された。(山本晋)