メス(右)とライバルのオス(左)の間に割り込んで「配偶者防衛」をするオス(中央)=基礎生物学研究所提供
意中のメスの目移りを防ぐため、メダカのオスはライバルがメスから見えないように妨害する――。こんな研究成果を、愛知県岡崎市の基礎生物学研究所などが発表した。欧州の動物学専門誌(電子版)に掲載された。
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研究所の横井佐織博士(28)らによると、ほかのオスを邪魔する行動は「配偶者防衛」といい、昆虫から霊長類まで広くみられるという。ただ、多くの動物は繁殖行動が行われる時だけ「配偶者防衛」が見られるが、メダカはそれ以外の時も行う。
研究グループは、メダカのメスは近くにいるオスを目で見て記憶し、そのオスの求愛を受け入れる傾向が強いことに着目した。
研究では、水槽に透明な仕切りを2枚入れて3区画に分けた。それぞれにメス、オス、オスの順番で1匹ずつ入れ、一晩置いた。メスに近いオスは、メスと遠いオスとの間の位置をキープする「配偶者防衛」を続ける。翌朝、仕切りを外すと、近いオスとメスがカップルになるのは平均で約20秒だったのに対し、遠いオスは70秒ほどかかった。
次に、同様の実験を、遺伝子を操作して「配偶者防衛」を示さないオスで行うと、メスは遠いオスの求愛を30秒ほどで受け入れた。この結果から、「配偶者防衛」がなければ、遠くてもメスに記憶されて受け入れられやすい、と結論づけた。
横井博士は「ライバルを物理的に近づけさせないだけでなく、視覚による記憶が大切なメダカは『配偶者防衛』を長時間続けてライバルを見せないようにしている」と分析。さらに「メスが目移りするのを防ぐため、自分だけを見てもらおうとしているのだろう」と話している。(北上田剛)