自民党の開票センターで当選確実となった候補者の名前に花をつける安倍晋三総裁=10日午後9時46分、東京・永田町、林敏行撮影
参院選の与党大勝を受けて、首相は11日にも大型の経済対策について具体的な検討に入るよう財務省などに指示する。秋の臨時国会は、9月中旬以降の召集となる。内閣改造と自民党役員人事は8月以降になる見通しで、首相は臨時国会に向けて政権運営の足場を固めたい考えだ。参院選で上積みした自民党の議席を背景に、今後の政権運営では首相官邸の主導権がさらに強まりそうだ。
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「アベノミクスを力強く前に進めていけというのが国民の声だ」。首相は10日夜のテレビ番組でこう語った。首相は選挙結果を踏まえ足元の景気を下支えする大型経済対策を行う考えで、秋の臨時国会に2016年度の第2次補正予算案を提出し、早期成立を図る。財務省などへの指示を踏まえ、12日の閣議などで経済対策の方針を示す。
自民党内では、大規模な公共事業を含む10兆円規模以上の対策を求める声が上がる。首相官邸幹部も「経済対策は大胆にやりたい」との方針で、経済を最優先する姿勢を強調し、秋以降の政権運営を軌道に乗せる狙いだ。
内閣改造は、8月以降に自民党の役員人事と併せて検討する方向だ。首相は10日、改造について「経済政策の策定状況を見ながら、与党と相談しながら決めたい」と述べた。政府高官は「政権は安定している。大きな人事は必要ない」と語り、政府・与党内では改造は小~中規模にとどまるとの見方もある。
9月中旬以降の臨時国会では、補正予算案のほか、消費税率10%への引き上げを来年4月から19年10月まで2年半延期する消費増税法改正案を審議する。また、通常国会で成立を断念した環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案も、「必ず通さなければならない」(自民党幹部)との姿勢だ。
また、首相は15、16両日にモンゴル・ウランバートルで開かれるアジア欧州会議(ASEM)首脳会合への出席を皮切りに首脳外交を活発化させる。特に重視するのは、ロシアのプーチン大統領と「新たな発想に基づくアプローチ」で進めることで一致した日ロ平和条約の締結交渉だ。首相は9月初旬、ウラジオストクを訪問してプーチン氏と会談する。さらに、年内にもプーチン氏訪日を実現させ、北方領土問題を含めた日ロ交渉の進展をめざす考えだ。
18年12月が任期となる衆院の解散時期も今後の焦点となる。消費増税を衆院任期後の19年10月まで再延期したことで、首相は解散時期について事実上フリーハンドを得ている。首相が悲願とする憲法改正をめぐる与野党の議論や経済情勢などをにらみながら、早ければ年末・年始も選択肢としながら衆院解散の時期を探ることになりそうだ。